多系統萎縮症について

身体が徐々に動かなくなってしまう難病「脊髄小脳変性症」の少女を描いた実話『一リットルの涙』は10年程前にドラマなど様々なメディアで取り上げられました。「脊髄小脳変性症」は難病として指定されている疾患で、病型が多数存在し、その内の1つが「多系統萎縮症」です。

今回は多系統萎縮症とは何か?
多系統萎縮症の原因は?
多系統萎縮症に対して鍼灸師が出来ること
以上についてお話していきたいと思います。

多系統萎縮症とは?

「多系統萎縮症」とは「脊髄小脳変性症」の1つです。
変性とは神経が徐々に弱くなって働かなくなることで、脊髄小脳変性症では身体のバランスをとる小脳の神経と、生命維持をうけ持つ大脳の底と延髄の神経が変性していくのです。

脊髄小脳変性症は大きく「遺伝性」と「非遺伝性(孤発性)」に区分され、多系統萎縮症は非遺伝性の中でも日本人に多い病気なのですが、神経変性が小脳以外にも広がるものが多系統萎縮症と呼ばれるようになりました。

多系統萎縮症は非遺伝性に分類されるため、発症に遺伝はあまり関係がありません。以前は「オリーブ橋小脳萎縮症」「線条体黒質変性症」「シャイ・ドレーガー症候群」という3つの病気として別々に分類されていましたが、症状の現れ方に違いはあるものの最終的には同じ症状になっていく為、3つの病気をまとめて多系統萎縮症と呼ぶようになりました。

オリーブ橋小脳変性症

多系統萎縮症の中でも患者数が多い病型で、全国の多系統萎縮症患者さんの約70%がこの病型です。主として歩行時のふらつきなどの小脳失調症を呈しますが、進行していくにつれて自律神経症状やパーキンソン症状(パーキンソニズム)が出現していきます。主な症状は歩行のふらつき、構音障害、嚥下障害、痙攣、高いいびき、無呼吸発作排尿障害、起立性低血圧、立ちくらみ、発熱などがあります。

線条体黒質変性症

発症の初期から筋肉がこわばって話しづらくなり歩行が困難になるなど、パーキンソン病の症状によく似ているため、正確な診断に時間がかかるケースがあります。多系統萎縮症のパーキンソン症状は、パーキンソン病に特有の安静時振戦(安静時の手の震えがほとんどの場合は出現しません。進行すると排尿が難しくなり、便秘になるといった自律神経症状や小脳失調も現れます。主な症状に筋肉のこわばり、手足の震え、歩行困難、構音障害、立ちくらみ、排尿困難、便秘などがあります。

シャイ・ドレーガー症候群

排尿困難、起立性低血圧などの自律神経症状が早期に見られることが特徴です。初発年齢は40~60歳代で男性に多いといわれます。なお、シャイ・ドレーガー症候群に限りませんが、夜間の鼾、睡眠時無呼吸などは上記の2疾患でもみられ生命予後とも関係するので重要です。主な症状に起立性低血圧、臥位性高血圧、睡眠時高血圧、食後性低血圧、睡眠時無呼吸、異常発汗、排尿障害、便秘、失神発作などがあります。

多系統萎縮症の原因は?

多系統萎縮症はごくまれな例をのぞき、遺伝性のない孤発性の病気と考えられていますが、発症の原因は十分に解明されていません。しかし近年の研究で、多系統萎縮症患者の脳内の神経細胞やその周囲に存在するグリア細胞中に、αシヌクレインとよばれる異常な蛋白質が存在することが知られるようになり、これを手がかりに発症機序の研究が進められています。

多系統萎縮症に対して鍼灸師が出来ること

多系統萎縮症は徐々に進行していき、最終的には寝たきり状態となっていく現代医学でも治療方法の確立されていない難病ですので、病気そのものを鍼灸治療で治すと言うのは残念ながら難しいです。しかし、鍼灸治療で多系統萎縮症の症状を緩和させること、人間が本来持っている自然治癒能力を引き出してあげることで病気の進行を少しでも遅らせてあげることは十分可能です。自分で出来ることは自分で出来る期間を延ばすことで生活の質(QOL)を高めることを目的として鍼灸治療を行います。

多系統萎縮症は病型によって出現してくる症状も様々ですが、鍼灸治療では多系統萎縮症のような症状の幅広い患者さんに合わせた治療を行えることも1つの大きなメリットです。例えば、めまいや立ちくらみなどの自律神経症状は自律神経の乱れを整えてあげることで、手足の震えや関節の動かしにくさなどの運動症状は筋肉や関節の循環を良くして柔軟性を上げていくことで随時対処していきます。

このページで出した多系統萎縮症の症状はほんの一部に過ぎませんので、ページにはないその他お困りの症状がある際は遠慮なく当院へご相談ください。