多発性硬化症について

多発性硬化症(MS)患者さんの数は、世界で約250万人といわれており、欧米で比較的多く、アジアやアフリカでは比較的少ない傾向がみられます。日本では、約13,000人の多発性硬化症患者が報告されており、年々増加傾向にあります。

今回は多発性硬化症とは何か?
多発性硬化症の原因は?
多発性硬化症に対して鍼灸師が出来ること
以上についてお話していきたいと思います。

多発性硬化症とは?

多発性硬化症(MS)は脳や脊髄、視神経などの中枢神経系の脱髄疾患の一つです。MSは英語のMultiple Sclerosisの頭文字をとったもので、病変が多発し古くなると少し硬く感じられるので多発性硬化症と呼ばれています。

私達の神経活動は神経細胞から出る細い電線のような軸索を伝わる電気活動によって全て行われています。家庭の電線がショートしない為に絶縁体が被われているように、軸索も「髄鞘」と言うもので被われています。この髄鞘が壊れて中の電線がむき出しの状態が「脱髄」です。脱髄が複数出来て、上手く電気信号が送れなくなった病気が多発性硬化症です。

多発性硬化症の症状は?

多発性硬化症でみられる症状は病変のある部位によって異なるため、患者さんによって様々で、毎回同じ症状が出るとは限りません。比較的よくみられる症状をいくつか例として挙げていきたいと思います。

1.感覚の障害

  • 痛みや温度の感覚が鈍くなる、逆に過敏になる。
  • ヒリヒリした感じなどの異常な感覚がある。
  • 顔や手足に、しびれや痛みが起こる。

2.運動や歩行の障害

  • 手足に力が入りづらい。
  • 身体の片側が動きづらい。
  • ふらついて歩きづらい。
  • ろれつが回らない。

3.眼の障害

  • 霧がかかったようで見えにくい。
  • 視力が急に低下する。
  • 眼を動かすと眼の奥が痛い。
  • 視野の中心に見えない部分が出来る。

4.精神的な障害

  • 理解力の低下。
  • 忘れっぽくなる。
  • 気分が高揚したり、逆に落ち込んだりする。

5.その他

  • 疲れやすい。
  • 便秘が続く。
  • 頻尿や尿漏れ、残尿感など。
  • なかなか眠れない(不眠)
  • 発熱、入浴、運動などで体温が上がると、症状が出現或いは症状が重くなる(ウートフ現象)

小ネタ:ウートフ現象

多発性硬化症の患者さんに特徴的なもので『ウートフ現象(温浴効果)』と呼ばれるものもあります。これは、脱髄した部分が温度の影響を受けやすくなるため、運動や入浴、発熱、温かい食べ物などの飲食で体温が上昇すると、一時的に症状が現れたり、悪化したりする現象です。一過性のものなので、体温が下がると元に戻ります。

多発性硬化症は多くの場合、「再発(症状が出る)」と「寛解(症状が治まる)」を繰り返しますが、症状が治まっている寛解期であっても、多発性硬化症が治ったわけではなく、水面下では髄鞘が持続的に障害されていると言われています。そのため、多発性硬化症を治療せずに放っておくと、身体への障害が徐々に進行・悪化してしまうことも少なくありません。

多発性硬化症の原因は?

MSになるはっきりした原因はまだ分かっていませんが、自己免疫説が有力です。
私達の身体は白血球やリンパ球などの免疫系によって細菌やウイルスなどの外敵から守られているのですが、何らかの原因で免疫が自分の脳や脊髄を攻撃するようになるのが自己免疫疾患です。多発性硬化症では髄鞘(ミエリン)が攻撃されるので、脱髄が起こり麻痺などの神経症状が出現します。自己免疫によって攻撃を受けてしまう原因はまだ分かっていませんが、遺伝的になりやすさを決定する因子が関与していると考えられます。

多発性硬化症に対して鍼灸師が出来ること

多発性硬化症は再発と寛解を繰り返していく疾患で完治するというのは難しいですが、出現している症状を少しでも抑える或いは症状が寛解している期間を延ばしていくことを目的とした鍼灸治療は可能です。多発性硬化症は障害された病変部位によって症状が多岐に渡るのですが、鍼灸治療では患者さんに合わせた治療をその場で行えることも大きなメリットです。

例えば、便秘や不眠などの不定愁訴は自律神経の乱れを整えてあげることで、痛みやしびれなどの知覚症状は神経の疼痛閾値(痛いと感じるライン)を下げることで対処していきます。何よりも多発性硬化症の原因と考えられている免疫はストレスなどでも低下するので、全身の筋肉をリラックスさせてあげることも目的とする鍼灸治療も大変意義があります。

このページで出した多発性硬化症の症状は、ほんの一部に過ぎませんので、その他お困りの症状がある際は遠慮なく当院へご相談ください。