今回はパーキンソン病とはどんなものか?
鍼灸師がどのように関わっていくことができるのか?
などなどをご紹介します。
パーキンソン病とは
パーキンソン病は様々な運動障害と自律神経症状を特徴とする疾患です。
日本では人口10万人当たり約100人にみられ、男女差はありません。
50歳~60歳代以上の高齢者に発症することが多い病ですが、40歳未満で発症することもあります。
パーキンソン病の症状

①運動障害
4つの代表的な症状に、振戦(しんせん)、筋固縮(きんこしゅく)、無動(むどう)、姿勢反射障害があります。
振戦:安静にしている時に、手や足に細かな震えが生じます。睡眠時はこの震えは止まります。
筋固縮:患者さんの腕や足を動かそうとすると、関節がカクカクするような抵抗が感じられます。
無動:動きがゆっくりで体を動かすのに時間がかかり(動作緩慢)、歩行時には速度や歩幅、腕の振りの低下につながります。歩行時の姿勢も前かがみで、小刻みとなります。
姿勢保持障害:重心がぐらついたときに、姿勢を立て直すことができずにそのまま倒れてしまいます。
②自律神経症状
パーキンソン病では高頻度で様々な自律神経症状が認められます。
例えば、便秘、嚥下困難(物が飲み込みにくい)、排尿障害(尿の回数が多いなど)、起立性低血圧(立ちくらみ)、発汗亢進などが認められます。
③認知、精神症状
パーキンソン病では軽度の認知障害や、うつ状態を伴うことが少なくありません。
パーキンソン病の経過観察
パーキンソン病の症状の経過は人それぞれで個人差がありますが、比較的進行が遅い病気として知られています。
パーキンソン病の進行具合を分類したものに、ホーン・ヤールの重症度分類があります。

図:ホーン・ヤールの重症度分類
パーキンソン病は、難病に指定されており、ヤールⅢ度以上に病状が進行した場合、医療費の公費負担制度の適用対象となります。管轄内の保健所に申請手続きを行う必要があります。
医療費の自己負担率は、年収や所得、病状の進行状況により、格差が生じます。
パーキンソン病の原因
原因は脳内のドパミン神経の減少です。私たちが体を動かそうとすると、脳の「大脳皮質」から全身の筋肉に、運動の指令が伝わります。
このとき、私たちの意図どおりに体が動くように、運動の調節を指令しているのが神経伝達物質の「ドパミン」です。
ドパミンは、中脳の「黒質」にある「ドパミン神経」でつくられています。
パーキンソン病になると、このドパミン神経が減少し、ドパミンが十分につくられなくなります。その結果、運動の調節がうまくいかなくなり、体の動きに障害があらわれるのです。
しかし、なぜ黒質のドパミン神経が減少するのかは、まだ完全にはわかっていません。
パーキンソン病の主な治療
薬物療法:減少しているドパミンを補充したり、ドパミンの代わりとして作用する薬を服用します。
手術療法:運動に携わる脳の神経細胞を一部破壊したり、電極を埋め込んで刺激し、運動障害などを改善します。完治させるものではなく、薬剤療法との併用が一般的。
遺伝子療法:薬剤療法の効果が現れにくくなってきた患者に有効。体内でドパミンを生成するのに必要な酵素(AADC)の遺伝子を細胞に組み込み、脳に注入します。
リハビリテーション:パーキンソン病で薬物療法と同じくらい大切なのがリハビリテーションです。目的は①体力維持、②筋肉と関節の柔軟性維持、③筋力維持、④姿勢や歩行の改善、⑤呼吸訓練があります。

パーキンソン病に対して鍼灸師ができること
パーキンソン病は進行性の病気で完治が望める病気ではありません。いかに症状を軽減させ、進行を遅らせるかが大事なポイントになってきます。
鍼灸治療は筋肉の緊張緩和や、自律神経症状の改善にはもってこいの治療です。思うように体が動かず、身体的にも精神的にもストレスを多く抱えておられる方が多くいます。筋肉の柔軟性を取り戻すだけでも、ADL、QOLの改善に効果的です。
また、あすなろ在宅治療院では鍼灸治療やマッサージと併用して、リハビリ、ストレッチに重きを置いています。自分だけでは動かすことがない動きなどを取り入れ、心地のよい治療も目指しています。
利用者の声
女性(70歳代
小刻み歩行が改善して助かっています。洋服の着脱も楽になった。もっと早く相談したらよかったです。
女性(80歳代)
来てもらった後は身体を動かしやすくなり、呼吸も楽にできます。曲がってきている背中が伸びるようで気持ちがいいです。また、歩く時に歩幅が狭かったのが少しずつ広がってきました。
肩の動きやすさ

肩の高さ(左右のバランス)

この方の場合は振戦や小刻み歩行がよく出現していたので、筋肉を緩めるために鍼やストレッチを中心に行っています。どうしても運動量が減ってしまうため、自宅でできる簡単な運動とストレッチの指導と声掛けも心がけています。
具体的な施術内容
筋肉の緊張が高まり、振戦、動作緩慢などが出現するパーキンソン病。筋肉の緊張を緩めるため、脚や腕に直接鍼を打つこともあります。
また、振戦や便秘などは交感神経の乱れから症状が悪化することが多くあります。そのため、私たちは交感神経の乱れを整え、体の免疫力が上昇するような鍼灸施術を心がけています。パーキンソン病の方に多い便秘の症状は、お腹や脚にお灸をすえて便通を促すこともあります。
身体的なストレスから、精神的にも落ち込まれたりする方も多くおられます。簡単な運動やストレッチの指導や、少しでも自分でできることが増えるようなお手伝いが出来たらと思っております。

このページで出したパーキンソン病の症状は、ほんの一部に過ぎませんので、その他お困りの症状がある際は遠慮なく当院へご相談ください。