高齢者浮腫

脳梗塞後遺症やパーキンソン症候群、脊柱管狭窄症など、様々な疾患が原因で歩行が困難に……。 浮腫のメカニズムや原因、注意すべき点など、高齢者の浮腫について、特に車椅子の方に焦点を当ててお伝えしたいと思います。

浮腫って何?

浮腫とは、何らかの原因で顔や手足など、身体の細胞と細胞の間に水分が過剰に溜まっている状態をいいます。
ヒトの身体の60%は水分でできていますが、高齢者は身体の細胞内に水分を貯める機能が低下しているため、通常より少なめの50%と言われています。
また、皮膚の深い部分(皮下組織)に溜まる水分が体重の5~10%を超えると浮腫と認められます。
簡単なチェック方法として、指で10秒ほど皮膚を軽く押します。
すぐに皮膚が戻らず凹んだままの状態であれば、浮腫んでいるということになります。
靴下を脱いだ際に、くっきりゴムの跡が残っているのも浮腫んでいる証拠ですね。

なぜ起こるの?

重力によって身体の水分は下へ下へと下がるので、老若男女問わず、そもそも下肢は特に浮腫が起こりやすい場所といえます。
また、下肢は心臓から最も遠いところにあるので、上肢や顔と比べて血流が滞りやすい場所でもあります。ふくらはぎは“第二の心臓”とも呼ばれ、通常は、歩行などによってふくらはぎの筋肉が働き、ポンプ作用によって心臓へと押し戻されますが、特に、歩行が困難で運動量が低下した車椅子の高齢者は、筋肉のポンプ作用が働かない上に筋力が低下してしまいます。

筋力が低下すると、ポンプ作用も低下してしまうので、さらに浮腫を悪化させてしまう原因となります。また、冷えが強いのであれば、冷えを改善させることも重要となってきます。
少しの冷えでも高齢者にとってダメージはとても大きく、血流が滞り、筋肉の動きが悪くなってしまうだけでなく免疫までも低下させてしまいます。

筋肉はいくつになっても成長する!

運動不足によって、筋力が低下し、血流が滞っているのであれば、運動量UP!筋力UP!血流促進!を目標に、固く細くなってしまった筋肉をほぐし、動かしてあげる必要があります。
もう歳なんだから、いくら動かしたって筋肉なんてつくはずがない……と、思っている方が多いのではないでしょうか?
確かに、若年者と比べると、筋肉の増え方は緩やかにはなりますが、少しずつ確実に筋力は増加することが立証されています。
90歳を超えていたとしても、いくつになっても筋肉は鍛えることが可能です!

第二の心臓を動かそう!

第二の心臓と呼ばれ、筋ポンプ作用が優れている下腿三頭筋(腓腹筋、ヒラメ筋)をマッサージでし、また、動かすことによって筋力UPを図ることが浮腫緩和の鍵となります。
歩行器や人の助けがあれば歩行が可能な方は、施設の廊下等を転倒に留意し、無理のない範囲で歩きましょう。
あくまで、散歩するくらいの気持ちで毎日少しずつ継続することが大切です。

立位はとれるが歩行が困難だという方は、手すりや人の手にしっかり掴まって立ち上がり、バランスに留意しながら、さらに、立位保持が難しいという方は座ったままの状態でそれぞれ、かかと上げを行いましょう。
これも無理はせず、できる範囲で行うことが大切です。
下肢の動作が不可能な方は、他動で足関節(足首)や膝関節を動かしてあげると効果的です。

注意するべきこと

注意しなければならないのは、高齢者は急に強い刺激をいれてしまうと、関節に炎症を起こしたり筋肉の繊維が傷んでしまうので、あくまで優しい刺激で少しずつ行う必要があります。
また、可能であるならば、足の指をグーチョキパーと、動かしたり、マッサージをしてあげると、より血流が促進され、効果が高まります。
鍼灸治療も浮腫緩和に大きな効果が期待されます。

そして、車椅子の高齢者の場合、足の裏がしっかり床もしくはフットレストについている状態をキープするのも重要になります。
なぜならば、座った状態で足の裏を床につけるだけでもポンプ作用が働くようになるからです。
足の位置を変えてあげるだけでも、高齢者にとっては大きな変化なので、下肢の浮腫に大きな効果が期待されます。

浮腫の裏に隠れた危険

高齢者の浮腫の主な原因は、運動量や筋肉量、全身の血液循環の低下だとお伝えしましたが、それだけではなく、浮腫の裏にはこんな疾患や原因が隠れていることがあります。

  • ・心疾患:心不全、肺性心など(下肢にでやすい)
  • ・肝臓病、腎臓病:肝硬変、糖尿病性腎症など(顔、手、腹部にでやすい)
  • ・内分泌性浮腫:甲状腺機能低下症など(女性に多い)
  • ・静脈性浮腫:静脈瘤など
  • ・薬の副作用:降圧剤(カルシウム拮抗薬)など

日頃からしっかりとコミュニケーションを図り、また、よく観察して、浮腫以外にでている症状がないか留意することが、病の早期発見や浮腫緩和の鍵となります。
少しでも、「あれ?おかしいな……」と感じたら、早めに病院を受診しましょう!

蜂窩織炎に注意!!

蜂窩織炎、またの名を、蜂巣炎を耳にしたことがありますか?
免疫力や抵抗力が低下している時に毛穴や傷口から細菌が侵入し、皮膚の深いところ(皮下組織)で化膿し、細胞が壊死してしまう感染症です。
感染症といっても、人から人へ感染することはありませんが、患部が赤く腫れあがって熱をもち、痛みを伴います。
時に、悪寒や発熱、関節痛を伴うこともあるようです。

主に、免疫力や抵抗力の低下した高齢者に好発するのですが、全体の90%は膝下に発症するため、浮腫と見間違えてしまうことがあります。
処置が遅れてしまうと、敗血症や腎炎、髄膜炎などの合併症によって、命の危険性がでてくるので要注意です。
下肢の腫れ以外に、赤みや痛みの症状がみられる際には、症状を安易に捉えず、早めに病院を受診することをお勧めします。

実際の施術例

80代女性

  • ・施設入居
  • ・下肢廃用による歩行困難のため、1日の大半は車椅子
  • ・歩行器を使用し、補助があれば歩行可能だが、疲れやすいため長距離歩行は不可能

下肢(下腿三頭筋と前脛骨筋を中心)に筋緊張緩和と血行促進を目的にマッサージを行います。
しっかり下肢の筋肉の緊張をほぐし、筋収縮の効率を上げた後に、筋力の維持・向上と可動域拡大を目的に座位、もしくは立位(施設の手すりを握る)の状態で「ももあげ」「かかと上げ」「つま先上げ」「足指でグーパーグーパー」を無理のない範囲で様子を尋ねながら行い、その後、施設廊下を利用し歩行機能向上を目的に歩行訓練にて終了。

初診時、足首がわからないほどパンパンに浮腫んでいたのが、現在、足首がわかるほどまで緩和。

施術前

施術前は、まだ靴下の跡がくっきり残るほどの浮腫が見られます。

施術後

靴下の跡が薄くなり、全体的に浮腫が緩和され特に足首周囲が細くなりました。

高齢者浮腫緩和といえば、あすなろ在宅治療院にお気軽にご相談ください。