変形性股関節症について

「脚の付け根が痛い」「違和感がある」「脚を動かせる範囲が減った気がする」中高年の女性が抱える股関節の悩みの90%以上が、股関節が変形する「変形性股関節症」が原因と言われています。

2013年の国民生活基礎調査では、要支援・要介護の原因は脳卒中(18.5%)、認知症(15.8%)、高齢による衰弱(15.4%)、転倒・骨折(11.8%)、関節疾患(10.9%)で、関節疾患と転倒・骨折、つまり運動器の問題によるものを合わせると脳卒中、認知症を超えるのです。

今回は変形性股関節症とは何か?
変形性股関節症の原因は?
変形性股関節症に対して鍼灸師が出来ること
以上についてお話していきたいと思います。

変形性股関節症とは?

まず、「股関節とは何か?」を理解していただいた上で、変形性股関節症について詳しくお話していきたいと思います。

股関節とは?

股関節は人体の中で最大の関節であり、その構造の特徴からかなり大きな負担がかかるようになっています。普段、片足で立っているだけでも体重の3~4倍もの重さが股関節にはかかり、早足で歩く時には約10倍もの力がかかると言われています。また、椅子からの立ち上がり動作や階段の昇降でも大きな力がかかるほか、床へのしゃがみこみ立ち上がりの動作では股関節に極めて大きな負担がかかると考えられます。

変形性股関節症

股関節において、先天性や後天性の疾病や外傷によって関節軟骨の破壊や変性が生じた状態を「変形性股関節症」と言います。破壊された軟骨は修復されることはほとんどなく次第に軟骨下の骨にも影響が及ぶようになります。骨が障害されると、修復反応として過剰な骨が形成され、本来丸い形をしていた骨頭がいびつに変形し関節症が進行していきます。

変形性股関節症の症状

変形性股関節症の主な症状は痛み・跛行・関節の動きの制限といったものです。
詳しく説明していきます。

痛みが出る

同じ変形性関節症の「変形性膝関節症」では立ち座りなどの動き初めに痛みが出ると言う特徴的な症状があり、「変形性股関節症」においてもこれは同じことが言えます。しかし、股関節は多くの筋肉や靭帯に囲まれているためか、症状がわかりにくい或いは症状が出ていても股関節以外に症状が出る患者さんもいらっしゃいます。

変形性股関節症の一般的な症状は股関節の痛みですが、初期にはお尻や太もも、膝などに痛みや違和感、だるさなどが現れるため股関節が原因だと気づかないことも多いのです。

症状が進んでくると動き始めた時に股関節辺りに痛みを感じるようになり、痛む箇所は次第に股関節周りに限定されていきます。更に進むと歩くと股関節の前後が痛む、一休みしないと歩けない、などの痛み「運動痛」が出るようになります。

動きの制限(股関節が動かしにくい)

痛みが強くなるのにつれて、靴下が履きにくくなったり大きな段差が上りにくくなったりと、股関節の動きも悪くなってきます。痛みから関節を動かさずにいると筋肉が硬くなり動きが悪くなる「関節拘縮(かんせつこうしゅく)」が起こり、深く曲げたり足を開いたりなどが苦痛になってきます。また、拘縮がひどくなると骨盤が傾いて悪い方の足が短くなったように感じられることもあります。

跛行(はこう)

痛い方の足をかばって歩こうとしたり、また痛みのために活動量が減って中殿筋などの筋力が衰えたりすると悪い方の足をついたときに身体が傾くため、肩を揺らして足を引きずるような歩き方「跛行(はこう)」になります。

変形性股関節症の原因は?

変形性股関節症の原因は、大きく次の2つに分類されます。

一次性

明らかな原因がなくて股関節が変形していくものです。これは加齢によって関節軟骨の細胞が老齢化して働きにくくなるためだと考えられています。欧米では、この一次性が大半を占めるそうです。

二次性

何らかの病気や外傷などが原因で起こったものです。日本では、この二次性が大半を占め、「先天性股関節脱臼」
と「臼蓋形成不全」によるものが約90%、圧倒的に女性に多いという特徴があります。ほかにペルテス病、特発性大腿骨頭壊死症、関節唇損傷などがあります。

「先天性股関節脱臼」とは

原因は解明されていませんが、生まれつき股関節が脱臼している、子宮内での異常姿勢、遺伝的素因(家族性)などが考えられています。最近は、発生率が減少傾向だそうです。

「臼蓋形成不全」とは

臼蓋(股関節の屋根の部分)の不完全な発育により大腿骨頭への被りが浅い状態で、先天性股関節脱臼に起因するものと、成長期に臼蓋の発育が正常に進まない後天的なものとがあります。中年以降に痛みが出て、はじめて臼蓋形成不全と診断される場合もあります。

変形性股関節症に対して鍼灸師が出来ること

変形性股関節症が発症してしまうと、痛みが強く出て周囲の筋肉が過度の緊張状態となって血流が悪くなり、更に痛みを悪化させる可能性があります。鍼灸治療を行うことで筋肉の緊張をとり、血流を改善させることで痛みを軽減させていきます。

変形してしまった骨を元に戻すことは残念ながら鍼灸治療にはできません。しかし、鍼灸治療を行うことによって変形性股関節症からくる痛みをコントロールし、リハビリなどの運動療法をより痛みや苦痛なく効果的に行いやすくすることで、結果的にQOL(生活の質)を向上させることは十分可能なのです。